コラム

着物を孫や嫁に遺したい|相続人以外への遺贈と遺留分・税の注意点

執筆:きもの査定ガイド編集部
この記事の結論

祖母の着物を孫や息子の妻に確実に譲りたい。相続人ではない人に渡すには、口頭の約束ではなく遺言による「遺贈」が基本です。特定遺贈の書き方、遺留分への配慮、相続税の2割加算、付言事項の活用までを整理します。

孫や息子の妻など、法定相続人ではない人に着物を譲りたいなら、口約束ではなく遺言で「遺贈」の形にしておくのが確実です。着物のような動産は特定遺贈(品物を指定して譲る方法)にすると、他の財産と切り離して意思を残せます。ただし相続人の遺留分や税の扱いには注意が必要です。

相続人でないと、着物は自動的には渡らない

民法上、遺産を受け取る権利があるのは法定相続人です。孫は、親が存命であれば(養子縁組などをしていない限り)法定相続人ではありません。息子の妻(嫁)も同様です。

  • 遺言がなければ、着物は相続人全員の遺産分割協議の対象になる
  • 「孫にあげてね」という生前の口約束は、相続人を法的には拘束しない
  • 形見分けは、相続人が合意すれば相続人以外にも渡せるが、あくまで相続人の判断になる

遺言で「特定遺贈」にする

遺言によって財産を譲ることを遺贈といい、品物を指定する特定遺贈と、割合で指定する包括遺贈があります。着物は特定遺贈が向いています。

項目特定遺贈包括遺贈
指定の仕方品物を特定(例: 黒留袖一式)遺産の割合(例: 全体の10%)
借金などの承継原則として引き継がない相続人と同じ立場で引き継ぐ
放棄原則いつでも可能期間内に手続きが必要
着物との相性高い低い

書くときのポイントは次の通りです。

  • 「紋付の黒留袖(○○家の家紋入り)と帯2本」のように、特定できる情報を書く
  • 着物は証紙・たとう紙・写真で記録し、品目をリスト化しておく
  • 誰が受け取るかだけでなく、受け取る人が辞退した場合の扱いも決めておく
  • 遺言の形式(自筆証書・公正証書・2026年に始まったデジタル遺言など)は、形式不備で無効にならないよう専門家に確認する

遺留分と相続税の2割加算に注意

遺贈の量が多いと、兄弟姉妹以外の相続人の最低限の取り分である遺留分を侵害することがあります。侵害された相続人は、受遺者に金銭の支払いを求める遺留分侵害額請求ができます。

  • 着物数枚の遺贈が直ちに問題になるとは限らないが、高価な作家物や骨董の場合は評価額が争点になりうる
  • 相続税の申告が必要な規模の遺産では、相続や遺贈で財産を取得した人が被相続人の一親等の血族(子・親)や配偶者でない場合、相続税が2割加算になる。孫(養子を除く)が遺贈で取得すると対象になる
  • 相続税がかからない規模でも、相続人同士の感情的な対立は起こりうる

付言事項で「気持ち」を残す

遺言には、法的効力のない付言事項を添えられます。着物にまつわる思い出や、なぜその人に譲るのかを書いておくと、他の相続人の納得感が高まります。

  • 着物にまつわるエピソード(誰が仕立てたか、どんな場で着たか)
  • 受け取る人に着てほしい場面・大切にしてほしい点
  • 他の相続人への感謝と、配分への理解のお願い

注意

  • 本記事は一般的な情報であり、個別の法律・税務判断を行うものではありません。遺言の作成や遺留分・相続税の判断は、弁護士・司法書士・税理士などの専門家にご相談ください。
  • 法令・制度は改正されることがあります。記事執筆時点(2026年10月1日)の一般的な整理であり、最新の内容は法務省・国税庁等の公式情報をご確認ください。
  • 着物の評価額は品質・状態・時期により変わります。金額の目安は断定できません。

きもの査定ガイド編集部

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