コラム

着物を生前贈与するという選択肢|相続税7年ルール改正で今できること

執筆:きもの査定ガイド編集部
この記事の結論

相続税の生前贈与加算が2027年以降段階的に7年へ延びる税制改正を踏まえ、着物を元気なうちに家族へ譲る「生前贈与」という選択肢のメリット・進め方・贈与税との関係、注意点を2026年時点の制度に沿って整理します。

死後の形見分け・遺産分割だけでなく、元気なうちに着物を家族へ譲る「生前贈与」という選択肢も広がりつつあります。結論として、着物も贈与税の対象になり得る財産であり、2027年以降は相続税の「生前贈与加算」の対象期間が段階的に7年へ延びるため、渡すタイミングを早めに検討する価値が高まっています。ここでは2026年8月時点の制度を踏まえ、着物を生前に譲る際の基本と注意点を整理します。

着物も贈与税の対象になる財産

現金や不動産と同様に、着物も個人から個人へ譲れば贈与とみなされ、贈与税の課税対象になり得ます。

  • 暦年課税の基礎控除は年110万円 — 1年間(1月〜12月)に受け取った贈与財産の合計額から110万円を差し引いた残りに贈与税がかかる(No.4408 贈与税の計算と税率|国税庁)。
  • 評価額は時価が基準 — 着物単体で数万円〜数十万円程度にとどまるものが多い一方、証紙・落款のある作家物やアンティークの逸品は評価額が跳ね上がる場合がある。
  • 家財として一括で贈与するケースもある — 複数点まとめて贈る場合は、合計額が110万円の基礎控除を超えるかどうかで課税の有無が変わる。

高価格帯の着物を贈る場合は、贈与税の申告要否も含めて事前に評価額の目安を把握しておくと安心です。

2026年時点の「生前贈与加算」ルールと今後のスケジュール

相続税の計算では、亡くなる前に贈与した財産を相続財産に足し戻す「生前贈与加算」という仕組みがあります。この対象期間が、税制改正によって3年から7年へ段階的に延長されている最中です。

相続開始の時期加算対象になる贈与の期間100万円控除
2026年12月31日まで相続開始前3年以内なし
2027年〜2030年2024年1月1日以降の贈与(年々対象期間が拡大)あり(延長分の合計100万円まで)
2031年1月以降相続開始前7年以内あり(延長分の合計100万円まで)

(出典: No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁、2024年1月1日以後の贈与から適用)

つまり2026年中に相続が発生する場合は従来どおり「3年ルール」のままですが、2027年以降に相続が発生するケースでは、2024年1月以降にさかのぼって贈与が加算対象になっていきます。着物を含む生前贈与を検討している場合、「対象期間が短いうちに」渡しておくことが、結果的に加算対象から外れやすくなる一つの目安になります。

着物を生前に譲るメリットと、死後の形見分けとの違い

死後の形見分けと比べて、生前に着物を譲ることには次のような違いがあります。

観点生前贈与死後の形見分け
本人の意向本人が誰にどれを渡すか直接決められる遺言書やメモがなければ、遺族の推測に頼ることになる
タイミング好きな時期を選べる(贈与税の課税年に注意)四十九日・五十日祭など、慣習上の時期が目安になる
手続き贈与税の申告要否を確認する必要がある遺産分割協議・相続税申告と絡む場合がある
思い出の共有本人から着方・由来を直接聞きながら受け取れる本人不在のため、由来が分からないまま譲られることもある

証紙・落款や産地・作家に関するエピソードを本人から直接聞ける点は、生前贈与ならではの利点といえます。資産価値だけでなく、着物にまつわる背景情報を残すという意味でも、元気なうちの受け渡しには意義があります。

着物を生前贈与するときの実務ポイント

いざ着物を生前に譲るとなった場合、次の点を押さえておくとトラブルを避けやすくなります。

  • 贈与契約書やメモを残す — 「いつ・誰が・何を受け取ったか」を書面や写真で記録しておくと、後の相続手続きで説明しやすくなる。
  • 高価格帯の着物は評価額の目安を確認する — 証紙・落款のある作家物や正絹の礼装は、査定士による無料査定などを活用して客観的な評価額を把握してから贈与額を判断する。
  • 年間110万円の基礎控除を意識する — 複数点をまとめて贈る場合、他の贈与財産と合算して基礎控除を超えないか確認する。
  • 他の相続人とのバランスも考えておく — 特定の家族だけに高価格帯の着物を生前贈与すると、将来の遺産分割で不公平感が生まれる場合があるため、早めに家族内で共有しておく。

こんなケースでは専門家に相談を

以下のようなケースでは、判断を自己流で進めず専門家に確認することをおすすめします。

  • 贈与する着物(一式)の評価額が110万円の基礎控除を超えそうな場合。
  • 複数の相続人がいて、生前贈与が将来の遺産分割に影響しそうな場合。
  • 2027年以降に相続が発生する見込みで、生前贈与加算の対象期間の拡大が自分のケースにどう影響するか判断がつかない場合。

具体的な贈与税・相続税の試算は税理士に、家族間の分配で意見が分かれる場合は弁護士に相談すると、後々の認識違いを防ぎやすくなります。

注意

  • 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の贈与税・相続税申告や法的判断を代替するものではありません。
  • 生前贈与加算の制度内容・経過措置は2026年8月時点の国税庁の公表情報に基づくものであり、今後の税制改正により変更される可能性があります。最新情報は国税庁の公式サイトでご確認ください。
  • 着物の評価額・査定額は個々の状態や市況によって異なり、本記事の内容は評価額を保証するものではありません。
  • 具体的な贈与税・相続税の申告要否や試算は、税理士など専門家にご相談ください。
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きもの査定ガイド編集部

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